日本には古来から即身仏という風習があります。瞑想したまま亡くなり、ミイラ化したその姿は何とも言葉に表せないような神秘さというか不思議さがあります。
そんな即身仏は失敗例も多かったようです。当時はまだ確実にミイラ化させるための技術に乏しく、即身仏を目指して瞑想に入った僧侶のなかにはその願いをかなえることができなかった人も多いといわれています。
日本各地に即身仏はありますが、各お寺で数年に一度衣替えをします。そのタイミングでは、衣を中に入れた限定のお守りが発売されるのですが、一般的なお守りよりも貴重なものとして人気があります。
ここでは、代表的な即身仏と失敗例、そして即身仏のお守りについてみていきましょう。
当時、即身仏の失敗例はかなり多かった
冒頭でも書いた通り、即身仏になろうと修行に入っても、上手くミイラ化できずに失敗してしまう例は多かったようです。
即身仏になるためには、身体の脂肪や水分などを可能な限りそぎ落とす必要があります。余分な脂肪などがついていると、体内に熱がこもってしまい腐敗の原因になります。
そのために即身仏を目指す当時の僧侶たちは主に以下の3つのステップを踏む必要がありました。
- 五穀を断ち木の実や種のみを食べる
- 木の葉と根だけで命をつなぐ
- 漆を飲む
2ステップ目までは脂肪をそぎ落とし、体から余分なものを取り除いていく段階です。3ステップ目は最後の最後に胃の中にあるものを吐き出すために飲みました。すでに極限状態まで脂肪などはそぎ落とされていますが、胃の中を空にすることによってより綺麗なミイラになることができます。
この一連の流れの中で、少しでも体に水分が多く残っていたり、脂肪が残っていたりすると死後、体はどんどん腐敗していってしまいます。
実際、脂肪の落とし方や脱水が不十分で腐っていってしまった遺体はたくさんあったようです。
水や脂肪が体から落ちていても失敗する例はたくさんあった
上で見た一連の流れが中途半端で体が腐っていってしまうという例も多かったようですが、それ以上に多かったのは環境による失敗です。
キレイなミイラになるためには食事制限や脱水だけでなく、乾燥した環境が何よりも重要です。
当時はどのようなメカニズムによってミイラになるのか?ということが完全に解明されていたわけではなかったので、湿った土の中の環境が原因で腐敗が進んでしまう例も多かったといいます。
成功率に関してはかなり低く、ほとんどが失敗。数字にすると成功率は1%~3%程度とも言われています。
即身仏のお守りの効果と購入できる日本のお寺
そんな苦行を乗り越えた末に仏になられた即身仏のお守りはとても効果の高いものとして有名です。
例えば、日本の即身仏でもかなり有名な真如海上人という即身仏を祀っている山形県の瀧水寺大日坊では、『即身仏御衣入御守』という名前でお守りが売られています。
真如海上人は、湯殿山の御縁年である丑歳と未歳に衣替えを致します。六年に一回の衣替です。
その御衣等がお守りの中に入り、求められた方々をお救いする訳です。お守りを直に身に付けられお守りでお救いいただいた方の御礼参りが多いので、当事者である私、住職も職員の皆さんも驚いております。特に一番多い御礼は交通事故、病気平癒、手術成功、合格学問成就、良縁子授け等ですが、他にも沢山の例がございます。
公式サイトにはこのように書かれており、お守りの効果自体は一般的なお守りと同じような内容ですね。お寺によって違いますが、おおむね1000円程度で販売されています。
日本で即身仏を祀っているお寺としては、以下が代表的です。
- 円明海上人(海向寺)
- 鉄竜海上人(南岳寺)
- 本明海上人(本明寺)
- 鉄門海上人(注連寺)
- 真如海上人(大日坊)
- 光明海上人(蔵高院)
- 仏海上人(観音寺)
- 全海上人(観音寺)
- 弘智法印(西生寺)
- 秀快上人(真珠院)
- 宥貞法印(貫秀寺)
- 舜義上人(妙法寺)
- 弾誓上人(阿弥陀寺)
- 妙心上人(横蔵寺)
いずれも有名な即身仏ですが、全体的に見てみると山形県や新潟などの寒い地域に集中しています。気候的にも乾燥しているため、即身仏としてきれいな状態で残りやすかったと考えられています。