【日本伝統】小太刀の流派と特徴をまとめてみた

歴史

日本の伝統といえば日本刀が真っ先に思い浮かびますよね。

時代劇でもお馴染みの日本刀を使った剣術は、最盛期には約1,000もの流派がしのぎを削りあっていたとのことです。

それぞれの流派にはそれぞれの信念があり、独自の発展を遂げてきたわけですが、そのなかでも個人的に小太刀に興味がありました。

きっかけは『たそがれ清兵衛』という映画です。

見たことがある人はわかると思いますが、この映画に登場する主役の清兵衛は小太刀の使い手ですよね。

これをきっかけに、小太刀に関して色々調べてみたのでここでまとめておきます。


小太刀術のみの流派は基本的にない

まず、小太刀(小太刀術)とは脇差を使う剣術のことをいいます。そして、この剣術のみを扱っている流派というものは存在しないということを押えておきましょう。

今考えてみると当たり前なのですが、知った当時は驚きました。だって上で取り上げた『たそがれ清兵衛』だって、るろうに剣心に出てくる四之森蒼紫の剣術だって、いかにも小太刀しか使わないような感じでしたからね(^-^;

色々調べてみると、小太刀というのはあくまでもそれぞれの流派のなかの一剣術として発展してきたもので、ほとんどの流派では居合術と小太刀術の2つがあるみたいです。ただ、そのなかにはもちろん小太刀に重点を置いている流派もあれば、小太刀はほとんど登場しない流派もあります。

ということで、ここでは小太刀に重点が置かれている主な流派をいくつか取り上げて、それぞれの特徴とともに紹介したいと思います。

中条流平法

小太刀術の実質的なスタートといわれるのが中条流です。有名なので聞いたことがある人も多いかもしれません。以下、wikipediaより一部引用。

中条流平法(中條流平法)は、中条長秀を開祖とする武術の流派。短い太刀を使う剣術で有名であった。剣術以外に槍術なども伝えていた。
中条長秀が中条家家伝の刀法と念流を合わせ自己の工夫を加えて創始したと伝えられる。室町期の京で創始されたことや、師である念阿弥慈恩が鞍馬山で修行した事などから、京八流の流れを汲む剣術とも言われる。

中条長秀は1300年代に生きた剣豪です。中条流の開祖という以外にも、室町幕府3代将軍・足利義満の剣術指南役を務めたことでも有名です。

この流派では基本的に約1mを超すような長い刀を相手に、約60cmほどの小太刀で応戦する技術がメインです。

中条流で言い伝えられた言葉に以下のようなものがあるので参考までに掲載しておきます。

「平法とは平の字たひらか又はひとしと読んで夢想剣に通ずる也。此の心何といふなれば平らかに一生事なきを以って第一とする也。戦を好むは道にあらず。止事(やむこと)を得ず時の太刀の手たるべき也。この教えを知らずして此手(このて)にほこらば命を捨る本たるべし

中条流平法口決

冨田(とだ)流

冨田流は上で紹介した中条流から派生した流派です。前述している『たそがれ清兵衛』のなかで登場する流派もこの冨田流ですね。以下、基本情報を一部引用しておきます。

越前国(福井県)において朝倉家に仕える富田勢源(とだせいげん)が創始した剣術。富田重政(富田越後守)らによって広まった。小太刀術で非常に有名な流派であり、その点のみが知られているが、実際は戦国期の流派でもあることから、薙刀術や槍術、棒術、定寸の打刀、三尺を超える大太刀等も含まれており、柔術も含まれていたとの説もある。ただし、富田家は「中条流」を名乗っており、富田流の流れを汲む流派で中条流を名乗っていることが少なくない。

ここにもある通り、中条流が小太刀だけで有名なのに対して、冨田流は薙刀や槍、体術に至るまで、さまざまな武術を伝えていました。

この冨田流の開祖である富田勢源は、日本の兵法三大源流のひとつであるといわれる天真正伝香取神道流という武術の達人でもあります。この流派は、いわゆる総合武術で、剣術や柔術以外にも、槍や手裏剣、棒術など、あらゆる武術がありました。

冨田流が小太刀だけではなく、さまざまな武術を取り入れているのには、富田勢源は神道流であったことに由来しているんですね。

鐘捲(かねまき)流

鐘捲流は中条流や冨田流の流れを汲んだ流派です。以下、一部基本情報の引用です。

鐘捲流(かねまきりゅう、別名:外他流)は、流祖・鐘捲自斎が中条流を学んだ後に創始した武術の流儀。ただし現在確認されている鐘捲流の伝書では鐘捲自斎の次代が伊藤一刀斎となっているものもある。 剣術を始め、小太刀等の技術を伝えていた。

この流派の開祖である鐘捲自斎は、新選組の隊士で使い手の多かった北辰一刀流の原型である一刀流の開祖・伊東一刀斎の師匠として知られています。

古文書によると、鐘捲自斎は富田流の名人富田治部左衛門の門弟であったことが記されています。

まとめ

3つの大きな小太刀術を伝える流派を紹介しました。小太刀は当然通常の長い刀と比べれば不利なため、時代を追うにつれて重点的に研究されなくなりました。そのため、流派全体で小太刀術の占める割合がもっとも大きかった流派といえば、おそらく始まりの中条流なのでしょう。

そして、この中条流の流れを受け継いだ流派は、中条流→富田流→鐘捲流→一刀流・・・と姿を変えていき、近代に形がしっかりと残っている北辰一刀流まで受け継がれてきました。

こう見てみると、剣術の流派ひとつをとってもかなり興味深いですよね。

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