スティーヴン・スピルバーグの名作として知られるシンドラーのリスト。人生のなかで大きな影響を与えてくれた作品と答える人も多いんじゃないでしょうか?
この作品のなかには、『赤い少女』が出てきますよね。
パートカラー(モノクロの中で一部分だけカラーを使うこと)が用いられており、ゲットーで逃げ惑うユダヤ人労働者たちのなかにポツンとひとつだけ赤色が強調されます。
この映画のなかでパートカラーが使われているのは『蝋燭の灯』、『赤い少女』、『ラストシーン』なのですが、そのなかでも特に強い印象を与えるのが赤い少女です。
私も初めて作品を見たときにはこの意味がよく分かりませんでした。
それから数回作品を見返したり、いろんな解説を読んでいく中で理解したこの『赤い少女』の意味を簡単に解説していきます。
逃げ惑う人たちのなかの『赤い少女』
これが例の『赤い少女』が初めに登場するシーンですね。
馬に乗って小高い丘の上からゲットーを見下ろすシンドラーは、その人ごみのなかに赤い服を着た少女を見つけます。
言葉は一切ないシーンなのですが、モノクロのなかに突如として現れる赤色とシンドラーの表情がただならぬ印象を与えます。
結論から書いてしまうと、この『赤い少女』はシンドラーがユダヤ人を助けようと決意する最大のきっかけとして重要な意味を持っています。
物語が進展する重要なきっかけになるシーン
そもそもですが、モノクロ映画におけるパートカラーというものは、何かを印象付けたり何らかの重要なきっかけになる部分で用いられるものです。
シンドラーのリストに出てくる『赤い少女』についていえば、今までユダヤ人たちを動物以下の存在だと見ていたシンドラーが良心を呼び起こすきっかけになったといえます。
映像を見ると分かりますが、大勢の大人たちのなかに幼い少女がポツンといます。
これを完全モノクロで表現するよりも、大人たちのなかの子供を強く印象付けるためにパートカラーが用いられているわけですね。
このシーンをきっかけに、シンドラーはユダヤ人労働者たちの救済を考えだします。
自分の従業員だけは守ろうと決意するきっかけにも
気付いた人も多いと思いますが、赤い少女が現れるのは上で取り上げたシーンだけではありません。
物語が進み、大量のユダヤ人が虐殺され始めたころ、荷車で運ばれる遺体のなかに赤い少女がいます。
このシーンは子供すらも無残に殺害されてしまうこの現状と、悲惨な状況を表しています。
そして、これを見たシンドラーは、厳しい状況のなかでも自分の従業員だけは守ろうと決意するきっかけになったんです。
このシンドラーの決意も物語のなかではとても重要なものですよね。
スピルバーグの黒澤明への敬意も込められている
世界的に有名な監督であるスティーブン・スピルバーグ監督ですが、日本映画界の巨匠である黒澤明監督のことを強くリスペクトしているというのは有名な話ですよね。
日本に来日した際にも、インタビューなどで黒澤明への熱い気持ちを語っています。
シンドラーのリストが制作されたのは1993年ですが、これよりも30年ほど前に制作された黒澤明の映画『天国と地獄』にもパートカラーが用いられました。
この作品に強烈なインパクトを受けたスピルバーグは、自身が担当したシンドラーのリストでもパートカラーを採用したといわれています。